2015年5月6日水曜日

猿之助さんの「男の花道」

2015年 明治座五月花形歌舞伎 昼の部 その2




「男の花道」です。

先月の「雪の丞変化」に引き続き、
猿之助さんの女形を拝見できて、とっても嬉しいです。

初めて観るお芝居でしたが、
あえて、ストーリーも明治座のチラシに載っていた
数行しか読まずに観させていただきました。

タイトルにある「道」というのは「ダルマ」のことだったのだ、
ということが、お芝居を観てわかりました。

「役者としての道」と「人としての道」、どちらを選ぶべきか?
歌右衛門(猿之助さん)は人としての道を選びました。
優先すべきは、人としてのダルマなり、と。

このお芝居のメインテーマは、
男の友情、そして、ダルマのコンフリクトだったのですね。

何度か もらい泣きをしてしまいました。

本当に、いいお話でした。

では、思い出されることを思いつくままに綴ってまいります。

上手のお風呂場から暖簾をくぐっての、
歌右衛門(猿之助さん)の登場の仕方が、
まさしく、「待ってました!」 でした。

お召しの浴衣は波にお魚? 荒磯?
双眼鏡でもよくわかりませんでしたが、
湯上がりにぴったりの粋な浴衣でした。
ニッポンの藍と白の組み合わせは本当によいものです。

博多献上の前結びは何という結び方なのでしょう?
歌舞伎では色々な帯結びが見れるのも、楽しみの一つです。
今の時代は帯結びと言えば、お太鼓ばかりですから、
様々にある帯結びは、歌舞伎の世界でしか
残っていけないかもしれませんね。

湯冷めしないようにと、浴衣の上に羽織られたのは、、
ユニクロのTシャツにもなった喜熨斗の柄の羽織でした。



忘れないうちに、他にも少し拵えのことを書いておきます。

3階だったので、花道からの出のときの
亀鶴さんの着物の襟元の裏地が
上からよく見えたのですが、
裾の裏地とも柄が違っていました。お洒落。
裾は少しだけ綿が入っていました。
亀鶴さんは、いつも安心して観ることができます。

秀太郎さんの立涌の小紋もステキでした。
秀太郎さん、うつむいている時の姿が、
とっても可愛らしかったです。
今回も、猿之助さんの舞台で
秀太郎さんが観られてよかったです。
ブログも楽しみです。

笑也さん、ピンクの着物の娘役でのご登場で
ちょっとびっくりしましたが、とってもお似合いでした。
田辺の娘かと思って観ていたのですが、
義理の妹のお役だったのですね。
お声もいつもと変わらず清涼でした。

笑也さんといっしょにご登場の門之助さん、
このようなお役は初めて拝見したのですが、
最後の引っ込みがおかしくって、
だいぶ笑いが起こっていました。

愛之助さんの田辺、憎々しさがよかったです。
観劇後に「家庭画報」を立ち読みしたところ、
このお役は、前回の亀治郎時代の時もなされて、
今回で二度目とのことでした。
愛之助さんの土生(はぶ)を観てみたい気もしました。

田辺(愛之助さん)が最後に潔く負けを認めたのには
大変に驚きました。
あら、この方、案外善い人だったのね、と。


猿弥さん、いつもながら、いいお声です。

歌右衛門(猿之助さん)の目を土生が診る場面で、
最後に、蝋燭の明かりだけになり、
それがとてもリアルで、実際はこの明るさであったのか
ということがわかって、よかったです。

歌右衛門が土生に自分の目を委ねたときの、
上に向けた顔が印象的でした。

歌右衛門が三味線を弾く場、
猿之助さんが実際に弾いているのかどうか
よくわかりませんでしたが、
最後は確実に猿之助さんでした。

さて、お楽しみ、
劇中劇の「櫓のお七」(猿之助さん)の人形振り、
何度か本当にお人形に見えた時がありました。 

襦袢の赤と降ろした黒髪の配色がとても鮮やかで
美しかったです。

真剣さと気迫を強く感じたお七でした。

有名なセリフ → セリフではなく詞章というらしい
羽が欲しい、翼が欲しい、飛んでゆきたい 知らせたい」
きっちり聞き取れました。

劇中劇でかかっていた大向うは、
一階から聞こえてきたように感じたのですが、
その後の中村座の後の場面でも幕内から大向うが聞こえてきたので、今回、大向うさん、幕内でお役としてスタンバっておられるのかも?

ちなみに、今日の3階からは女性の声の大向うが聞こえなかったので、ほっとしました。

あんまの弘太郎さん。
歌舞伎ではよく、目くらのあんまさんが出てきますが、
昔の日本は、目くらの人を普通に扱っていて、
今だと差別だとか何だとか、おかしなことになっていますが、昔のほうがよっぽど自然で温かかったと感じます。

中車さん、楽での進化を観てみたい気がします。

花道から必死に駆けつける歌右衛門、
心も姿も美しかったです。

長谷川一夫さんが使われたという
黒地のお引きずりの歌右衛門、
本当にきれいでした。



こちらはよく宣伝で使われるお写真。
このお着物です。この写真では見えませんが、
裾の松が黒地に映えてよいのです。


猿之助さんが踊りが非常にお上手だというのは、
「獨道中五十三驛」の道哲のときに気が付いたのですが、
(気がつくのが遅くてすみません)
最後の「老松」の踊り、素晴らしかったです。
もう一度観たいくらいです。

竹三郎さんもよかったです。


愛之助さんのことで、前回の他の配役も知りたくなり、
歌舞伎美人で調べてみました。
 
2010年「男の花道」 御園座
             
加賀屋歌右衛門  亀治郎
田辺嘉右衛門  愛之助
山崎順之助  男女蔵
加賀屋歌五郎  亀 鶴
加賀屋歌之助  薪 車
富枝妹雪乃  宗之助
田辺妻富枝  吉 弥
加賀屋東蔵  竹三郎
万八の女将お時  門之助
土生玄碩  段四郎



同じお役をなさってるのは、
猿之助さん、愛之助さん、竹三郎さん、亀鶴さん。

こちらが今回の配役です。

2015年「男の花道」 明治座

加賀屋歌右衛門市川 猿之助
土生玄碩市川 中 車
田辺嘉右衛門片岡 愛之助
山田春庵市川 男女蔵
加賀屋歌助中村 壱太郎
山崎順之助市川 猿 弥
按摩杢の市市川 弘太郎
松屋忠兵衛市川 寿 猿
富枝妹雪乃市川 笑 也
加賀屋歌五郎中村 亀 鶴
加賀屋東蔵坂東 竹三郎
田辺妻富枝市川 門之助
万八の女将お時片岡 秀太郎


では、本日の一言、

~ダルマを守る善人が主人公の芝居は気持ちいい~

でした。



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